3.設置場所の選択B、直射日光の検討@
さて、次に検討しなければならないこととして、水槽には、どの程度の太陽の光を当てるべきかという問題があります。というのは、日光には、植物性プランクトンを繁殖させる力と、水温を上昇させる力があるためです。
植物性プランクトンという言い方では、具体的なイメージを抱きずらいので、別の言い方をいたしますと、日光は、水槽の水を緑色にしてしまいます。
これは、いわゆるアオコと呼ばれる植物性プランクトンが、水の中で爆発的に繁殖をして起こる現象ですが、水が緑色になればなるほど、魚の鑑賞は難しくなります。ひどい場合には、彼らが水槽のガラス面近くに寄ってきた際に、かろうじてその存在を確認できる程度になってしまうことでしょう。また、常に緑色のフィルター越しに魚を眺めることになるわけですから、錦鯉の模様の本来の色合いを楽しむこともできなくなります。

水が緑色では、魚の鑑賞には不適切です。
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この場合の対処方法としては、アオコを殺すか、水を取り替えるかの二者択一です。
アオコを殺すための一番簡単な方法は、薬剤の使用です。そのための薬が市販されていますので、これを買ってきて、水に溶かすということになりますが、薬の効き目というのは対象の個体によって差があります。ようするに、同じ濃度の薬を使っても、死ぬアオコと死なないアオコが存在するということです。
すべてのアオコを殺すためには、薬剤の濃度を、対象が死ぬまで濃くしていくしかありません。とはいえ、薬の使用量は、水槽の水量に応じて規定値が設定されていますので、設定を超えて薬を使用した場合には、アオコばかりか、肝心の魚の健康にまで害が及びます。結局のところ、規定量の薬剤を使用しただけでは、アオコの一掃はできずじまいで、水はうっすらと緑色であり続けるというのが、ありがちな事例です。
夏場など太陽光線が強い時期には、朝、別段、緑色ではなかった水が、夕方には濃緑色に変わっているということがよくあります。その都度、薬を追加して使用するというわけにはいきませんので、この場合には、結局、水を交換するしか方法はありません。
アオコを殺す方法については、その他に、主として海水魚用の水槽器具である、紫外線殺菌灯を使うという手もあります。本格的に、庭池で錦鯉を飼育している人の場合は、屋外用の紫外線殺菌灯を、濾過槽から池への水の吐き出し口付近に設置していることがありますが、これと同じことを、水槽の場合にも行うのです。
仕組みとしては、水に直接、人工的な強い紫外線を照射することで、水中の雑菌や、プランクトンなどを殺してしまうというものです。したがって、魚や濾過槽内の濾過バクテリアに対して、紫外線光が当たるような使用をしてはいけません。
使用にあたっての詳しい注意点は、製品に添付されている取扱説明書に譲りますが、この方法を採用した場合は、濾過槽内で、水の汚れを物理的・生物的に濾過した後、さらに紫外線により、なお残存しているアオコや、雑菌類を殺してしまいますので、処理された水は、常に清潔で透明です。
しかしながら、清潔すぎて、逆に、魚には無菌病棟のような状態となりますので、この方法で飼育されている魚は、アオコや雑菌が常時存在している水で飼育されている魚と比べて、抵抗力が低くなる傾向があるようです。
魚に限らず、生き物は、たとえば風邪のように、菌を原因としてかかる病気に繰り返して感染することで、徐々にその菌に対する抵抗力を身につけていくわけですが、紫外線により、常に無菌に保たれた水で飼育された魚の場合は、この『徐々に』という経験が不足していますので、抵抗力が強くありません。
紫外線殺菌をした場合に限りませんが、例えば、新しく気に入った錦鯉を見つけて購入した場合には、特に注意が必要です。その魚を、今まで飼っている魚といきなり同居させてしまうと、買ってきた魚自体は元気に泳いでいるのに、今までの魚は、途端に体調を崩したり、発病、ひどいときには死んでしまうといった事態に発展することがあるのです。
この原因は、新しく買ってきた魚の体内や、その魚が入っていた水に含まれていた病原菌などが、水を介して、今までの魚に感染するために起こるものです。
どの水にどのような菌が含まれているかは、池の数、川の数、水槽の数だけあると言っても過言ではありません。概ね、同じ水の中に住んでいる魚は、数はともかく、同じ種類の菌を保有しているものですが、同じ鯉でも、例えば北海道に住んでいる鯉と、九州に住んでいる鯉では、その体内に保有されている菌の種類もまったく違っていることでしょう。
菌と言っても、悪さをするのは、必ずしも病原菌だけとは限りません。ある水の中に住んでいる魚にとっては、生まれたときから身の回りに住んでいる菌であるため、まったく無害の菌であるにもかかわらず、別の水の中に住んでいる魚にとっては、その菌は、今まで周囲になかった菌であることから、ある意味、未知の細菌としての効果を発揮し、その魚の体調を崩してしまうということだってありえるのです。例えて言いますと、私たちが、どこか海外に旅行に行くとした場合、行く先の国によっては、何らかの予防接種を受けてからでないと、渡航が禁止されているというのと同じことです。その国に住んでいる人々にとっては、別に何でもない、普通に身の回りに存在しているだけの細菌が、私たちにとっては、未知の細菌になりえるのです。
そのようなわけで、別々の場所で手に入れた魚を、同じ水に入れるという行為は、色々な種類の菌を、同じ水の中に入れあう行為であるのだと、まずは認識をしてください。通常は、ある魚にとって未知の細菌であった場合でも、もともと、その水に住んでいる魚にとっては無害な菌なのですから、身体がその菌の存在に慣れて、抵抗力がつくまでの一時期は体調を崩すかもしれませんが、その時期を過ぎれば、何の問題も起こりえません。
けれども、もし、その魚が、まだ発病はしていないというだけで、何らかの致死性の細菌や、伝染力の強い病気にでも感染していた場合には、どうなるでしょう?
安易に、今まで飼っていた魚と合流させてしまうと、瞬く間に既存の魚まで感染してしまいます。発病し、重度の症状や死亡、最悪の場合、全滅という事態にまで発展しかねませんので、新しく魚を購入した時には、今までの魚と同居をさせてしまう前に、よく薬浴をするなどして、新規の細菌や病気を持ち込まないようにという注意が必要なのです。
色々な薬浴の種類について、詳しくは、後ろの章で説明をしますが、私の場合、普段は、最も簡単な方法として、新しく購入した錦鯉だけを、水を満たした60センチ水槽に隔離し、エアレーションと濾過器具を稼働させた上で、ごく一般的な1キログラム袋入りの食塩を、三分の一ほど水に溶かすということをしています。
当然、水は、塩辛い塩水になってしまいますが、自然の鯉は、河口近くの汽水域にも住んでいますので、それに比べれば塩分濃度は薄く、一時的に体調を崩すことはあっても、死ぬようなことはありません。この状態で、数週間程度、隔離飼育による塩水消毒をおこない、発病の兆候が見られないのを確認してから、今までの魚に合流をさせるのです。
もちろん、この方法では、既存魚に、新魚からの細菌が感染するのは防げますが、新しく買った魚が、今までの魚から、何らかの菌に感染するのまでは防げません。新魚にとっては、消毒後、その魚にとっての未知の細菌が住んでいる池なり水槽なりに移されるということになりますので、隔離飼育時は元気であったのに、同居後、この新しい魚だけが体調を崩したり、発病をするという事態はありえます。とはいえ、新魚を原因として、今まで飼っていた魚全体に病気が広がるという最悪の事態は防げますので、必要最低限の薬浴として、私は、この方法を採用しています。

溶けきれない塩の固まりが沈んでいます。
水をなめるとしょっぱいですが、この程度の塩では、
魚に問題はありません。
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現在は、インターネットの普及などにより、通信販売網が発達していますので、日本中のどこの産出の魚であっても、場合によっては外国産の魚ですら、自宅にいながらにして手に入れることが可能です。けれども、これは同時に、目に見えないから分からないというだけで、魚の身体についている細菌や、魚が入っている水の中に含まれている細菌の移動も、手軽におこなわれてしまっているということを意味しています。
イメージとして、自分の家から、遠い場所の水に含まれている細菌ほど、自分の家の水に含まれている細菌とは種類が違っていて、魚にとっての未知の細菌ということになるような気がしませんか? 昔であれば、魚の流通は、国内での移動が、せいぜいでしたので、例え、魚にとっての未知の細菌であったとしても、いずれは順応して、深刻な事態には至らずにすんでいましたが、昨今では、順応不可能な細菌の発生も確認されています。
ですから、病気の錦鯉に限らず、熱帯魚や外国産の亀はもちろんのこと、ごく普通の金魚や日本産でも他地域に生息する魚、動物に至るまで、本来、その場所の自然環境下には存在していないはずの色々な生き物を、安易に河川に放流したり、野山に放したりするのはいけないことです。何の気ない行為ですが、生態系の重大な破壊につながりません。
話が大きくなりすぎましたので、現実的なところに戻しますが、例えば、飼っている鯉や金魚に病気、別に治療が難しい病気というわけではなく、ごく普通の何らかの病気が発生したとして、その魚の値段が数百円であったと仮定します。それに対して、その病気の治療薬の値段は千円だとします。おおかたの人は、魚の命には換えられないとして、治療薬の購入を選択していただけるものと思いますが、残念なことに、このようなケースにあたり、少数ですが、魚自体の買い換えを選択なされる方がおられるのも事実です。

病魚です。
この鯉は、五匹五〇〇円で購入した内の一匹ですが、
命は、お金には換えられません。
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何らかの事情から、もし、どうしても治療の放棄をせざるを得ない状況があるとしても、そのような場合には、『まだ生きているのだから、せめて広いところに放してやろう』と考え、自然界に病魚を放つような行為だけは慎んで下さい。仏心が、思わぬ仇となりかねません。異論は承知の上で、残酷なようですが、死を見届けた上で焼却処分にしてあげるというのが、飼い主としての、せめての責務だと思います。 |