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2.最低限、必要な物A、エアポンプと蓋

 さて、水槽の次に最低限必要な物には、エアポンプがあります。
 水槽内というのは、魚にとって限られた空間です。自然界であれば、大量の水に大量の酸素が溶け込んでいるため、住んでいる魚が酸素不足を起こしてしまうような事態はなかなかありませんが、水槽の場合は、魚一匹あたりの水量も溶存酸素量も圧倒的に少ないのですから、何もしなければ、酸素不足になってしまう方が当然です。
 そうさせないためにはエアポンプ、いわゆるブクブクが必要となってきます。
 この装置については、様々なメーカーから、様々な能力や形状の製品が販売されています。作動音が静かであることを強調している製品もあれば、サイズがコンパクトであることをうたい文句にしている製品もあります。どれを選んでも一長一短がありますので、購入者が、好みで選べばそれで良いですのが、あえてチェックポイントをあげさせていただきますと、交換用部品が容易に入手できる製品か否かということになるでしょう。
 エアポンプの仕組みは、きわめて簡単です。要するには自転車の空気入れと同じで、空気を圧縮して、チューブを通して水槽の中へ押し込むというものです。分解すると分かるのですが、エアポンプの内部には、ふいごと同じ役割を果たすゴム製の部品が存在します。使っているうちに、このゴムが劣化し、亀裂が生じたり、穴があいたりしてしまうのです。その場合は格段に吐き出す空気の量が減少してしまいますので、新しいゴムに交換しなければなりません。そのための部品が容易に手に入る製品を選択するのが良いわけです。



分解したエアポンプです。
中央部に、ふいご役のゴム部品が存在します。



劣化して亀裂が入ったゴム部品です。
すみやかに、交換が必要です。

 まずは、観賞魚店であなたが手に取ったエアポンプのメーカー名と型番を確認してください。おそらく、その製品が売られている場所の近くには、交換用の部品も置かれていることだと思いますが、それは、今、あなたが選んだエアポンプでも使えるものですか? メーカーが同じでも、型番が異なると、ゴム部品のサイズも異なりますので注意が必要です。あなたが選択したエアポンプ用の部品が、同じ店内で普通に取り扱われているならば、その製品を購入しても問題はないでしょう。けれども、もし、あなたの選んだエアポンプ用の交換部品が売られていない場合には、別の機種を選択する方が無難かと思われます。
 それから、エアポンプを購入する場合には、若干割高でも、空気の吐き出し口が2つ以上あるものを選択した方が良いでしょう。そうすれば、ゴムの劣化から、いきなり空気の供給が途絶えてしまう恐れが少なくなります。もし、一方の吐き出し口用のゴム部品に穴があいても、残る一方の吐き出し口からの空気は水槽内に供給されていますので、手遅れになる前に、交換用のゴム部品を買いに行くまでの時間の余裕ができるのです。
 また、吐き出し口が2つあれば、将来水槽を増やした場合や、病気の魚を別の容器に隔離して治療する必要が生じた場合などにも簡単に対応することができます。
 もちろん、エアポンプだけ購入したところで、それだけでは何の役にもたちませんので、エアポンプから吐き出された空気を水槽内に送り込むためのエアチューブと、その先端にとりつけて、空気を細かい気泡状に変化させるエアストーンもあわせて買いましょう。
 エアチューブには、素材の違いから、長く使っていると硬化して固くなってしまう無色透明の製品と、時間が経っても固くなりにくい材質でできている半透明の製品がありますが、後者を選択しておいた方が、将来的には有利です。エアチューブからエアストーンをはずして接続し直したり、継ぎ手を使用してエアチューブを延長させたりする必要が生じた際などに、前者の場合には固くなってしまっていて、抜くことも新たに刺すこともできないことが往々にしてありますが、後者の場合には、その心配が少なくてすみます。硬化したエアチューブの代替品を、その都度買い換えなくてもすむのです。
 しかしながら、エアチューブ以上に買い換えの可能性が高い物は、エアストーンです。
 エアストーンにも、色々な種類があるのですが、もっとも一般的で安価なものは、青や黄色の砂状の粒子を丸く固めた物に、エアチューブとの接続口がついたものでしょう。
 細いパイプ状の接続口を、一回り太いエアチューブに差し込むことで両者を接続するのですが、この接続口が、チューブを引き抜く際の衝撃にとても弱いのです。大抵の場合、チューブから差し込み口が抜けるのではなく、差し込み口自体はチューブについたまま、逆に差し込み口の方が、エアストーンから引っこ抜けてしまいます。その場合には、エアストーンの本体部分はぐずぐずに崩壊してしまいますので、ただちに新しい物と交換しなければなりません。そうならないためには、将来、エアチューブから、エアストーンをはずす可能性があることを念頭において、差し込み口の根本までをエアチューブに差し込んでしまうのではなく、過度の力をかけなくても抜くことができるように、軽くはめておく程度にして下さい。せいぜい、5ミリメートルもさしておけば、それで十分です。理想を言えば、エアポンプを購入する際には、同時に予備のゴム部品とエアストーンを、最低一組は購入しておくと良いでしょう。
 さて、水槽で錦鯉を飼育するにあたって最低限必要な物の最後は、蓋になります。
 突然ですが、「鯉の滝登り」という言葉があります。
 野生の鯉が、急な滝をジャンプで乗り越えていく様子を、人が困難を乗り越えて成長していく姿に重ねあわせて表現した言葉なのですが、鯉には滝を登るイメージがあるということなのでしょう。端午の節句に鯉のぼりを飾るのは同じ理由からくる一種の願掛けです。
 現実には、岩魚のような渓流魚と違って、急な滝を登りきるほどには、鯉の泳力は強くはありません。にもかかわらず、なぜ、そのような滝登りのイメージが出来上がったのかというと、自然界に住む鯉が、よく飛び跳ねる魚だからということにつきると思われます。
 釣りをする人であれば、よくご存じのことだと思いますが、春から秋にかけて早朝に鯉の住む川や湖沼へ行けば、大きな鯉が飛び跳ねている姿を目撃することができるはずです。
 錦鯉は、自然界の魚ではありませんが、鯉の一種である以上、やはり、よく飛び跳ねる習性を持っています。そのために、錦鯉をせまい水槽で買う場合には、蓋をしておかないと外へ飛び出してしまう恐れがあるのです。ひどい時には、夜の内に魚が水槽から飛び出していたことに気がつかずに、朝には水槽の近くに錦鯉の干物ができあがっていることにもなりかねません。仮に発見が早くても、魚体に傷ができていることでしょう。そのような悲劇を起こさないためにも、水槽に蓋が必要となってくるのです。観賞魚店の水槽売り場に行けば、各種水槽のサイズに合わせた、ガラス製の蓋が売られていますので、それを購入するのが一番良いでしょう。
 ただ、いくら水槽に蓋をしたからといって、飛び跳ねるという、魚の習性それ自体を押さえ込むことができるわけではありません。購入初期の錦鯉は、おそらく懲りるまで水槽内で蓋に向かってジャンプを繰り返すことだと思います。そのため、鯉のジャンプの力に負けて、蓋が外れてしまうことがないように、その上には、何か重りになるようなものをのせておかなければなりません。
 もっとも、魚の方も馬鹿ではありませんので、何度かジャンプをしては頭をぶつけるということを繰り返している内に不用意な飛び跳ねはしなくなります。とはいえ、それでも、何かの拍子には跳躍しますので、錦鯉を飼っている限り、水槽には重りをのせた蓋が欠かせないのです。
 ただし、蓋をすることで水槽からの飛び出しにより魚が死んだり傷ついたりすることは防げますが、その蓋自体に頭をぶつけて魚が傷をつくることまでは防げません。
 傷といっても、放っておいても完治する程度の軽いものだとは思いますが、観賞魚ですので、あまり傷があっては美しくありません。どうしても、傷をつくらせたくないという方は、既製品のガラス蓋ではなく、ビニール袋や、網戸の網のような物を使って、柔らかい蓋をご自分で製作してみても良いと思います。
 しかしながら、どちらもお世辞にも見栄えが良いとは言えませんし、網の場合にはどうしても水しぶきの通過を許してしまいますので、水槽周辺の防水対策をより厳重にしなければなりません。やはり、既製品の蓋を選択するのが無難な結論となるでしょう。
 ガラス蓋では、誤って割ってしまう恐れがあるということを懸念される方は、手頃な厚さの透明なアクリル板をカットして蓋とするのでも、別に問題はありません。
 いずれにしても、錦鯉を水槽で飼育するために、最低限必要な品物は、60センチ水槽とエアポンプ一式と蓋になります。たったのそれだけで、飼い始めることができるのです。


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